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2014年7月24日 (木)

「才市さんが,はぁ参っとんさるで」

 才市さんは,毎朝のように当山のお勤めにお参りし,当時の住職,梅田謙敬の法話を聞き,その味わいを口あいにして,謙敬に見せていたそうです.ところが,その謙敬の法話は,「目を半眼に開き幾分早口で流れるように説き進められた.毎席大変むつかしい専門用語を話され解しかねるお話もあった」(有田氏の回想)というものでした.
 謙敬は,仏教書を読みながら「面白いわい」とよく言っていたそうです.そして,自分が面白いと思ったことをそのままお説教で話すことも多かったらしい(梅田尚子の回想による).「和上さん」になろうかという人が,自分が面白いと思ったことをそのまま話せば,そりゃ,難しくもなるでしょう.謙敬自身,自分の法話が難しいものであることは自覚していたことでしょう.ただ,性分として,それを平易に言うことができなかったものと思われます.

 ところが,そんな小難しい話を,才市さんは,方言そのままの平易な話し言葉で口あいにして持ってくる・・・.これは,謙敬にとって大きな驚きであったことでしょう.と同時に,喜びだったに違いありません.謙敬が才市さんを偲んで,「恋い慕わしき 法の言の葉」といったのは,そんな気持ちを表わしているように感じられます.
 才市さんは,毎朝のお勤めに早めに来ていたようです.謙敬が「お供飯はまだか.才市さんが,はぁ参っとんさるで[もうすでに参っておられるぞ]」といって本堂から台所にやってきて,お供飯を持って本堂に戻っていく姿がよく見られたといいます(当時,お供飯は別に炊いていた).寒い時などに,お参りは才市さん一人ということもあったようですが,そんな時には,才市さん一人を相手にご法話をしていたそうです(この段落は,梅田尚子の回想による).

 そんな才市さんは,謙敬にとって最も親しい身内のような存在だったでしょうし,理解者のような存在だったといっても言い過ぎではないような気がします.

 
 

【補足】
 有田氏の回想:
・・・和上さん[謙敬]は謹直なお方で,信仰心厚く朝夕の勤行や月例の法座を欠かされたことは一度もなかった.法座の度毎必ず一席の法話をなさった.何時も目を半眼に開き幾分早口で流れるように説き進められた.毎席大変むつかしい専門用語を話され解しかねるお話もあったが大変貴重な法話をして下さったので参詣者達も次第に馴れて何時とはなしに真宗の真意正を解する者も多くなったように思う.
 浅原才市老人は毎朝必ず参詣する.法座は欠かしたことがない.お参りした帰りに庫裏に立寄って「口あい」(才市さんのあじわいの詩)を差し出し「和上さん私は先日お説教をこう味わわして貰いましたけえ見ちゃんなさいませ」と言って見て貰って居た.時には重面布衍されることもあった.浅原老人の詩の中に出てくる浄土真宗の専門用語の詩句は,殆ど和上さんの日頃の法話の際使用し説かれたもので,老人も立派に正しく理解して詠いあげている.・・・
有田 義七郎「和上さんの追憶」(宝樹山安楽寺『第十世住職 正念院釋謙敬略年譜』, 私家版, pp.14--18 所収)より.引用は pp.15--16.

 梅田尚子の回想:梅田尚子は謙敬の娘で,安楽寺前前坊守.才市さんが参って来ていた頃の様子を直接見ています(才市さんが83才で往生されたとき,尚子は29才).上の回想は口伝え.

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コメント

温泉津におじゃましてから2ヶ月近くになってしまいました。
ご無沙汰しています&お世話になりました。書き込みのペ-スで健康状態が伺えます。
特別職公務員と無給介護士、おまけに主夫までしていると、旅行なんて夢のようなことですが、久しぶりにノンビリさせてもらいました。
私が初めて島根に行って、地元の法話を聞いてビックリしたのは、難しい仏教用語がたくさん出てくることでした。聞く側のレベルの高さはこちらとは比べ物にならないようです。20年も寺で学習をしている仲間は「なるべく仏教用語を使わすに、話して下さい」と講師にお願いしている始末です。もっとも 聞く回数が才市さんのころよりずっと少ないので仕方の無いことかも知れませんね。
西楽寺さんのお朝事に2度お参りさせていただきましたが、必ずミニ法話があり、謙敬さんもあのようにお話をされていたんだろうな~ぁと思いました。
毛穴から入るくらい聞かないとわかるようにはなりませんかね?
最近 お話を聞くことがめっきり少なくなってしまいました。いまどきネットや録画したもので聞けるのですから、懈怠としか言えません。

破旬さま.お返事もせずに失礼しました.お会いしてもう半年以上になるのですね.お互い,blogの更新が止まっていますが,ま,ボチボチ行こか,でこれからもよろしくお願いします.

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